6月の蛍―宗久シリーズ1―
汗で着物の襟が肌に張り付き、それを指先で直しながら、私は空を見上げた。



頭上に差した日傘から浸透してくる太陽の熱が、頭の中をぼんやりとさせる。





夜はもう、鈴虫が鳴く季節だというのに……。










金森の自宅の庭には、頭を垂れた向日葵が並んでいた。


それを横目に、私は玄関の呼び鈴を鳴らす。


「暑かったでしょう?どうぞ」



程なく、金森が出て来た。





持参した手土産を渡す際、微かな酒臭が鼻を刺激した。



……昼間から飲んでいるのだろうか。







「奥様はご在宅ではありませんの?」


「あぁ、うちのは朝から友人と出掛けていますよ」







嫌な予感が寒気となり、私の背筋に汗と共に流れた。




けれど………私はそれさえも飲み込んでしまったのだ。








「どうぞ」


金森は、冷たい麦茶を出してくれた。




通された居間、居心地の悪さを掻き消す為、私は麦茶で喉を潤す。




金森は、氷入りのグラスに琥珀色の液体を注ぎ、口元に運んでいた。



………お酒だろうか。






「あの…検査結果はどのようになりました?」
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