6月の蛍―宗久シリーズ1―
そのせいか、僕は伯父にたいそう可愛がられた。

容姿が伯父似だから、余計だろう。




先週、見舞いに行ったが、伯父は痩せ細ってしまっていた。



妻と母が席を外し、二人きりになった時、伯父は静かに聞いてきた。





亡くなった妻は、自分を迎えに来てくれるだろうか、と。






伯父は伯父なりに、死期が近い事を感じていたのだろう。



骨と皮だけになってしまったカサカサの手を差し延べてきた伯父、そのすがる様な視線に、僕は返事をした。






必ず迎えに来る、と。




確証は無い。


勘……としか言えない。




少なくともその時の僕には、それ以外の返答は許されなかった気がしたのだ。



多分、伯父の最後の願いだろう。





「責任重大だな……」



誰に言うまでもなく呟き、軽くため息をついた。



水分を含んでしまったスーツの上着を、ハンガーに掛ける。




その時だ。







「……ごめんください」




玄関の方から声がした。






「どなたかいらっしゃいませんか?」





透き通った、よく響く女性の声だ。
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