6月の蛍―宗久シリーズ1―
向かいに座る金森に問い掛けた。





早く聞きたかった。


私の身体は、どんな状態なのか。


夫との子供は、望めるのか。






あぁ、とうなづき、金森はグラスを飲み干した。



置かれたグラスの中、流氷の様な氷が傾き、金属みたいな音を奏でた。







「咲子さんの身体ですが…」




息を飲んだ。


金森の口元を見つめる。









「子供は、難しい状態ですね」









「………………」









………身体が、震えるのが、分かった。





握り締めた両手に力を込め、震えを懸命に押さえる。




難しい………。




「それは………子供ができない…と……そういう事なのでしょうか………」


「確率的には、無に等しいかもしれませんね」




無に……………?












開け放たれた窓から風が入り込み、私のうなじをすり抜けた。




秋の気配を含んだ心地良い筈のその風は、私の身体を更に強く震えさせる。





子供は、難しい。





金森の言葉が、私の思考を支配する。





確率的には……無………。




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