6月の蛍―宗久シリーズ1―
「咲子さん次第では、この事実は俺の中にしまっておくつもりですが」









……………ああ……。



私は何て馬鹿だったのだろう。



こんな事、決して許される事ではないのに………。







怖かった………。







私の秘密が、更に夫を苦しめる。



私を苦しめる。





ただ、それが怖かった……。














熱気の篭る部屋の空気、鼻を突く酒臭。



蛇の様に絡み付く、金森の汗ばんだ身体………。






私は、呑まれるのだろうか………。










動けなかった。







ただ、グラスの中の氷が溶けていく様を見つめ、その視界が涙で曇っていくのだけを感じていた。









これは、夢の続きに違いない。







悪い夢の…………続きなのだ、と。










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