6月の蛍―宗久シリーズ1―
次の日、金森に簪を聞く為、私は病院に電話を入れた。
直接会って話すのが、嫌だった。
私の身体には、金森の執拗に絡み付く蛇の様な悍ましい感覚が、鮮明に残されていたからだ。
消える事は、無い……。
「あぁ、簪ですか?預かっていますよ」
金森の軽い口調。
この男は昨日私にした事等、恥とも思ってはいないのだ。
罪の意識等無いのだ。
「返しては頂けませんか?大切な物なのです」
これ以上、金森と関わりは持ちたくは無い。
簪さえ戻れば……。
「返す?」
受話器の向こう、金森の笑い声が微かに聞こえた。
「いいですよ。取りに来て頂けるなら」
「本当ですか」
…………良かった…。
簪が戻って来る。
安堵から、強張った肩の力が抜けていくのを感じた。
しかしそれは、一瞬の出来事として通り過ぎただけであった。
「では私、明日にでも病院の方にお伺いして…」
「いえ、自宅の方に来て頂けませんか?」
「……………え」
.
直接会って話すのが、嫌だった。
私の身体には、金森の執拗に絡み付く蛇の様な悍ましい感覚が、鮮明に残されていたからだ。
消える事は、無い……。
「あぁ、簪ですか?預かっていますよ」
金森の軽い口調。
この男は昨日私にした事等、恥とも思ってはいないのだ。
罪の意識等無いのだ。
「返しては頂けませんか?大切な物なのです」
これ以上、金森と関わりは持ちたくは無い。
簪さえ戻れば……。
「返す?」
受話器の向こう、金森の笑い声が微かに聞こえた。
「いいですよ。取りに来て頂けるなら」
「本当ですか」
…………良かった…。
簪が戻って来る。
安堵から、強張った肩の力が抜けていくのを感じた。
しかしそれは、一瞬の出来事として通り過ぎただけであった。
「では私、明日にでも病院の方にお伺いして…」
「いえ、自宅の方に来て頂けませんか?」
「……………え」
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