6月の蛍―宗久シリーズ1―
僕が今居る部屋と玄関は、大分離れている。


インターホンでも聞き取りにくいくらいだ。




なのにその声は、まるで直接耳にあてられたヘッドフォンから聞こえる様に、はっきりと僕の鼓膜を振動させたのだ。







「はい、今行きます」





返事をし、軽くネクタイを緩めながら玄関へと向かった。







その時なぜか、先刻帰り道で見上げた、おかしな空の模様が脳裏を横切っていた。








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