6月の蛍―宗久シリーズ1―
夫の手が、私の肩に置かれた。


指先が、そっと額に触れる。



「……熱は無い様だな」





この人は、変わらない。




こうして私を心配してくれて、優しい言葉をかけてくれて、気遣ってくれて。



温かくて優しくて………。




私は、あなたが思っている様な女ではありませんのに……。





「大丈夫です、あなた…」



添えられた夫の手を握りしめる。




温かい…温かい……。



「私は、大丈夫」

「咲子……」





私を包む、夫の腕。


背中に染み込んでくる、優しい体温。








「辛い事があるなら、僕に話して欲しい」


「あなた………」


「咲子は僕が守る。この世の悲しい事から、苦しい事から、咲子を遠ざける」




耳元…心地良く響く、夫の声。



大好きな声………。






「咲子の為にならば、この家を捨ててもいいんだ」





あなた……あなた……。


あなたの抱きしめてくれる腕の強さと、その声の温もりは、まるで初春の鮮やかな新緑の中に包まれている様に、穏やかな安心感で包み込んでくれる。




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