6月の蛍―宗久シリーズ1―
金森との関係は、まだ続いている。


終わる気配は見えない。



簪はまだ、私の元に戻ってはいないのだ。







今日も…………呼び出されている。








行きたくはない。


行かなくて済む方法ばかりを考える。




考えても、わからなかった。




従うしかなかった。






行かないと言うのはたやすい。



その後が怖い。



私は必ず、愛しいものを全て失うだろう。



それを受け入れる勇気は無い………。


夫の優しさを失ったならば、私は………帰りたい場所を失う。



愛を失う。







醜い………。




私は醜い。






夫との愛を続かせる代償として、金森に身体を許しているのだから。










「咲子」




呼び掛けに、うつむいていた顔を上げた。





「帰りは深夜になるだろうから、先に休んでいなさい。寒いから、暖かくして休むんだよ?」





優しい夫の言葉。




口調、視線、笑顔……。




全てが、私を労る為のもの………。







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