6月の蛍―宗久シリーズ1―
そんな時、いつも思う。
この身体から、せめて心だけでも抜け出せたならいいのに。
そうして、夫のそばへと飛んでいけたならいいのに……。
「お義母様、私、少し出て参ります」
約束の時間が迫り、覚悟を決めた私は、居間に居る姑に声を掛けた。
姑は、来客中であった。
その中年の女性は、私も知っている。
分家の嫁で、遠縁にあたる。
叔母と呼んではいるが、家系的にはほとんど他人に等しい。
姑が管理している貸家を借りていると聞いた。
姑から、お金を借りている事も。
姑の機嫌取りなのか、時々こうして訪れて来る。
私は、この女性が好きではなかった。
詮索好きなのだ。
あれこれと、有る事無い事を、大袈裟に吹聴して回る癖がある。
「あら、咲子さんお出かけ?」
「ええ……」
そう、と叔母は笑った。
作り笑いだ。
「どこにお出かけ?」
「友人の所に…約束がありまして」
「あら、そう?お気をつけて」
その言葉に、心はこもってはいない。
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この身体から、せめて心だけでも抜け出せたならいいのに。
そうして、夫のそばへと飛んでいけたならいいのに……。
「お義母様、私、少し出て参ります」
約束の時間が迫り、覚悟を決めた私は、居間に居る姑に声を掛けた。
姑は、来客中であった。
その中年の女性は、私も知っている。
分家の嫁で、遠縁にあたる。
叔母と呼んではいるが、家系的にはほとんど他人に等しい。
姑が管理している貸家を借りていると聞いた。
姑から、お金を借りている事も。
姑の機嫌取りなのか、時々こうして訪れて来る。
私は、この女性が好きではなかった。
詮索好きなのだ。
あれこれと、有る事無い事を、大袈裟に吹聴して回る癖がある。
「あら、咲子さんお出かけ?」
「ええ……」
そう、と叔母は笑った。
作り笑いだ。
「どこにお出かけ?」
「友人の所に…約束がありまして」
「あら、そう?お気をつけて」
その言葉に、心はこもってはいない。
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