6月の蛍―宗久シリーズ1―
「近い内………いつでしょうか……」



そうですねぇと笑いながら、金森はベッドの隣に置かれた洋酒へと手を伸ばす。


「再来週、二十三日にでも返しましょうか?」






………その日に……また来いと…。







金森の薄笑いに、嫌悪感が込み上げる。





「…いつも…そうおっしゃって……返しては下さらないではありませんか」

「返しますよ、いずれ」

「いつですか?!もう……嫌です!耐えられません!」



握り締めた手の甲に、涙が落ちた。







悔しい………。







分かっているのに、逆らえない。


泣く事しかできない。





これ以上、夫に嘘はつきたくない。




嫌……もう、何も考えたくはないのに……。







「嫌ならば、断ればいいではありませんか。俺の誘い等は」






それが出来ない私を見透かしている金森は、そう言って笑う。




いつでも、あなたの秘密をばらせますよ……と…その笑みは告げているのだ。




卑怯な男……。







「どうせならば、楽しめばいいではありませんか」



ねっとりとした金森の指が、私の顎をつかむ。
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