6月の蛍―宗久シリーズ1―
酒臭混じりの息に乗せられた、金森の言葉……。
「子供ができないならば、楽しむしかないでしょう?」
………一瞬で…嫌悪感が憎悪に擦り変わる。
「っ――触らないで!!」
金森の手を激しく叩き、跳ね退けた。
渇いた金森の笑い声……私は、部屋を飛び出した。
冬の日照時間は短い。
午後五時前であるにも関わらず、外は冴え冴えとした冷気が充満していた。
闇夜かがった黒褐色の空、停滞している厚い雲は、何かの予兆を警告するかの様に静かにうごめき、この土地を、私の心を飲み込む。
吐き出す息の白さに、今更ながら身震いをした。
―雪が降るかもしれないな―
そんな夫の声が、耳の奥から響いた。
震える身体を肩掛けで包み、歩き出す。
歩きながら足元に視線を這わせると……途端にまた、涙が溢れた。
……取り残されている様な気がした。
私だけ、別世界に立っている様な気がしていた。
誰も居ない、一人ぼっちの世界に。
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「子供ができないならば、楽しむしかないでしょう?」
………一瞬で…嫌悪感が憎悪に擦り変わる。
「っ――触らないで!!」
金森の手を激しく叩き、跳ね退けた。
渇いた金森の笑い声……私は、部屋を飛び出した。
冬の日照時間は短い。
午後五時前であるにも関わらず、外は冴え冴えとした冷気が充満していた。
闇夜かがった黒褐色の空、停滞している厚い雲は、何かの予兆を警告するかの様に静かにうごめき、この土地を、私の心を飲み込む。
吐き出す息の白さに、今更ながら身震いをした。
―雪が降るかもしれないな―
そんな夫の声が、耳の奥から響いた。
震える身体を肩掛けで包み、歩き出す。
歩きながら足元に視線を這わせると……途端にまた、涙が溢れた。
……取り残されている様な気がした。
私だけ、別世界に立っている様な気がしていた。
誰も居ない、一人ぼっちの世界に。
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