6月の蛍―宗久シリーズ1―
無くした簪を知り、好都合と利用した。



私との、都合の良い関係を持続させる為に………。






私はそれを信じ………今まで………。









何て事だろう。







金森に、簪を返せる訳が無い。







持っていなかったのだから。







見た事すら無いのだから。








簪は、ここにある。









持ち主から離れ、紫陽花の下で季節を凌ぎ……今、私の手の中に戻っている。







「……………良かった」










安堵感が、私の目頭を熱くさせた。





簪が、戻ってきた。







大切な、大切な……夫からの………。






簪を胸に抱きしめ、私は泣いた。




そして、決断をする。











もう、終わりにしよう。







私はもう、金森の脅しには屈しない。




怖くはない。










夫に、身体の事を打ち明けよう。





夫は、聞いてくれる。




必ず、受け止めてくれる。






最初から、こうすれば良かった。





初めから分かっていた事だったのに……。
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