6月の蛍―宗久シリーズ1―
夫は、夫だけは、私の身体の事を責めたりはしない。


共に……それでも共に在り、共に生きてくれる。







子供ができなくとも、私に対する夫の優しさに変わりはない。




私が夫に対する想いに、変わりは無い様に。









姑に、何を言われてもいい。









私には、夫の心がある。



優しさがある、温もりがある。








それだけで強くなれる。






私は今まで、そうしてこの家で生活していたのだから。








私は世間体を、私の事で、夫の立場が悪くなると悩み過ぎていたのだ。



そばに居られなくなるという恐怖に、捕われ過ぎていたのだ。







大切なのは、考えるべきなのは、それでは無かった。



真実を、二人で受け入れていく事だった。




夫は、それが出来る人。




私はそれを、一番理解していた筈だったのに………。










愚かだ。



私は愚かだった。






間違っていた……最初から、間違っていたのだ。




もう、大丈夫。



簪がある。


私の心が、強い決意がある。







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