6月の蛍―宗久シリーズ1―
なぜ鍵が……?







拳を作り、軽く戸を叩く。



「お義母様、いらっしゃいますか」








………反応が、無い。








姑は、来客中であった。





私が家を空けたのは、三時間程。



その間に出掛けたのだろうか。









姑は、私が鍵を持って外出しない事を知っている筈。


長時間、家を空ける事は無いからだ。







「お義母様?」





呼び掛けと共に戸を叩く。




やはり反応は無い。



辺りを見渡す。




縁側も、半分雨戸が閉じられている。




まだ、閉じるには早い時間なのに………。






不安が、込み上げる。






何かあったのだろうか。








冷たい空気に身体を強張らせ、肩掛けを口元まで被せた。





寒い…………。








すでに空は闇の時刻。



覆われた雲の厚さで、月どころか星空さえ見えない。

冷たく、冴えた冷気。


朝まで会えない太陽が、恋しくなる程の寒さ………。






赤くなり始めた両手を擦り合わせ、息を吹き掛ける。







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