6月の蛍―宗久シリーズ1―
白い息は、私の両手を一瞬だけ包んでくれたが、それはこの寒さの中では気休めにしかならない。



空を見上げた。




本当に、雪が降るかもしれない。












ふいに、視線を感じた。









縁側………半分閉じられた雨戸のその間、姑が立っていた。





家の中から窓越しに、睨む姑の……針の様な視線……。







「お義母様…」






冷たい視線だが、私の周りを安堵が包んだ。



姑は居たのだ。







「お義母様、申し訳ありませんが、玄関を開けては頂けませんか」






縁側へと寄り、姑を見上げ声を掛けた。







だが………。









「咲子……お前、どこへ行っていた」




窓の向こうから低く響く、姑の声。




思わず、息を飲む。






「友人の所へ……」

「嘘をつくな!わしが何も知らんとでも思っているのか」











夜の空気よりも冷たい感覚が、私の中を突き抜けた。







鼓動が早打ち、表情を凍らせていくのが、分かった。





嘘をつくな………。





嘘を………。




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