6月の蛍―宗久シリーズ1―
何を話せばいいのか、私にはわからない。




ただ今は……夫と離れるのが…別れるのが……恐ろしくて……怖い!


金森との事を知られたくはない!










裏切っていたのは事実。


嘘を重ねていた事も事実。




けれど、心は変わってはいない。




金森に、夫への愛までは奪われてはいない。



苦痛に泣いても、それだけは必死に守ってきた。


それだけを守りたかった。



それだけが、嘘だらけの私の、たった一つの真実だったから。








ならばせめて、夫に償いを!



私の口から、夫への償いを!







「お願いでございます!開けて下さい!私の…私の話を!」






夫に、私からの真実を……!








身体の事を、話そうと決めていた。


今夜、打ち明けるつもりでいた。



最初から、やり直したかった。



間違っていた道筋に、ようやく気付けたのに………。








「お義母…様……!」




泣き叫ぶ声は、夜の冷たい闇へと吸い込まれる。



「お願い………あの人には……」




…………知らせないで。





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