6月の蛍―宗久シリーズ1―
もはや感覚の無い両手が、力無く落ちた。


そのまま私は地面へと崩れ、膝をつく。







「…………お義母様…」






閉じられた家の戸………。



いくら泣いても、開かれる事は…もう二度と無いのかもしれない。










これが、私の罪。




欺き続けた、許されない、罪深い私への罰……。








「…………あなた」







とめどなく溢れる涙は、冷えた地面へと吸い取られていく。











夫は、私と金森との関係を知るだろう。




それは、今更どうあがいても、防ぐ事はできないのだ。









防ぐ………。






そう考える事自体、私が汚れている証ではないか。





……私にはもう、あの優しい夫の愛を受ける資格は無い。












終わった……………。



何もかも。






私は、愛しいものの全てを失ってしまったのだ……。






雪が降るかもしれないな…。



夫の言葉通り、ひとひらの雪が、うつむいた私の視界へと舞い落ちてきた。






肩掛けを深く頭から被り、私は……家を、庭を…出た。
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