6月の蛍―宗久シリーズ1―
ここで、蛍を見つけた。
淡く若い光に、私と夫は見とれた。
健気に辺りを照らす光に、幸せな気持ちになれた。
―鼈甲の簪、やはり咲子に似合ったな―
笑い、私の髪に触れる夫の指が、鮮明に浮かび上がる。
優しくて、温かい……あの人の………。
懐から、簪を取り出した。
綺麗な、簪。
紫陽花に隠れついてしまった泥は、私の罪の様だ。
簪に込められた夫の想いを踏みにじってきた、私の罪の様………。
震える手で簪を握り締め、そのまま髪に挿した。
今の私に、この泥を落とす資格は、無い。
神社は、静かだ。
静寂で…淋しいくらいの孤独感を私に与える。
石段の脇には、小川が流れている。
あの蛍は、ここから生まれたのだろう。
綺麗な場所でしか生きられない蛍。
だからこそあれほどの、美しい光を生み出せるのだろう。
私は今まで、あんな風に光れた時はあったのだろうか。
今となっては、思い出せない。
.
淡く若い光に、私と夫は見とれた。
健気に辺りを照らす光に、幸せな気持ちになれた。
―鼈甲の簪、やはり咲子に似合ったな―
笑い、私の髪に触れる夫の指が、鮮明に浮かび上がる。
優しくて、温かい……あの人の………。
懐から、簪を取り出した。
綺麗な、簪。
紫陽花に隠れついてしまった泥は、私の罪の様だ。
簪に込められた夫の想いを踏みにじってきた、私の罪の様………。
震える手で簪を握り締め、そのまま髪に挿した。
今の私に、この泥を落とす資格は、無い。
神社は、静かだ。
静寂で…淋しいくらいの孤独感を私に与える。
石段の脇には、小川が流れている。
あの蛍は、ここから生まれたのだろう。
綺麗な場所でしか生きられない蛍。
だからこそあれほどの、美しい光を生み出せるのだろう。
私は今まで、あんな風に光れた時はあったのだろうか。
今となっては、思い出せない。
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