6月の蛍―宗久シリーズ1―
雪はしんしんと、辺りの景色を白く塗り替えていく。


ただ降り積もる為だけに、降りてくる。



この世界を、浄化するかの様に………。






「………綺麗…」








雪が頬にかかり、私はかじかんだ指でその場所をなぞった。





「あ…!」






途端、風が肩掛けをさらっていく。











手を伸ばした………瞬間だった。







雪に足をとられ、よろめく。







……視界が、回転した。





凍えた身体に、頭に、激痛が走る。






痛みの悲鳴を上げる間もなく、私の身体が、流水の様に流れて落ちていくのを感じた。
















私は…………どうなったのだろう。




目の前には、平行に広がる近い地面。



落ちてくる、雪の破片。







それから………その雪の絨毯の上に広がっていく………赤い………模様……。








身体が、動かない。




力が、入らない。



声も、出ない。





何が起こったのだろうか。






.
< 73 / 93 >

この作品をシェア

pagetop