6月の蛍―宗久シリーズ1―
視界の隅に、石段の最下段が見える。










私は………あそこから落ちたのだろうか。








雪に足を取られたのは覚えている。




視界が回転したのも。





あの時に、落ちてしまったのだろうか。









赤い…………これは…血?







頭が、痛い。




身体中、どこに痛みがあるのか、わからないくらい。



きっと、どこかをぶつけて怪我をしたに違いない。











一瞬、家を出てはならないという義弟の言葉が浮かんだ。










彼はもしや、この事を予言していたのだろうか。



不思議な人だから。









このまま倒れていては、私は危ない。





朝には、冷たくなってしまう。





助けを呼ばなくては。



立ち上がり、立って………助けを………。










助け…………?












誰に?












…………笑えた。






なぜか、私は微笑んでいた。






.
< 74 / 93 >

この作品をシェア

pagetop