6月の蛍―宗久シリーズ1―
「女性達が月を見上げるのは、きっと似ているからではないでしょうか」





僕の言葉に、咲子さんは細い首を傾げた。





「似ている?」

「ええ」







そう、月は女性に似ている。




丸みを帯びた輪郭も、その光も。








「健気…なんですよ。太陽の様に激しくはない、決して出過ぎた眩しさではない。けれど、その穏やかな存在感は、ここに居るから大丈夫と…そんな安心感を与えてくれます」



「あなたの奥様と、似ていらっしゃるのね」



思わず、僕は笑う。





「いえ、うちのはどちらかと言えば太陽ですが……しとやかな面が欠けていましてね、騒々しくて。何でも笑ってごまかせると思っている。ですが、それも慣れればかわいいものです」




応えながら頭を掻く僕を見て、咲子さんは声を立て笑う。





奥様を、愛していらっしゃるのね……と。












そう、それがわかるから僕は、咲子さんを導かなくてはならない。




誰よりもこの女性を想い、愛し続けている……あの人の願いを叶える為に。








それは、僕の願いでもあるのだから。





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