6月の蛍―宗久シリーズ1―
電話は、妻からだった。


病院からの電話。






報せの内容は、これも……僕にはわかっていた。








「ああ…そうですか………うん……うん……」









受話器の向こう、妻の口調は相変わらず慌ただしいが、それは逆に僕を安心させるものだった。







わかっていたのだから。



全て。





咲子さんがここを訪れて来た時には、全て………。














報せは、つい先刻、伯父が息を引き取ったという報せであった。










伯父の最後を聞いた僕は、役目が果たせた事を確認する。













伯父は笑いながら、穏やかに息を引き取ったそうだ。






先立った妻の名を呼びながら。
















そうして、永い永い眠りへと誘われた伯父の右手の中には…………なぜか紫陽花の花びらが一枚、慈しむ様に握られていた、と…………。















6月の蛍 終



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