ドキドキ
「あれ、」

「なに、どーしたの」



今日はいつもと同じ電車に乗れる。
ともちゃんと駅の売店でまたポッキーを買って待っていれば昨日見たカップルが居た。



「なに、知り合い?」

「ううん、昨日見た顔だなって思っただけ」



さしたる興味も示さず、ともちゃんはポッキーにご執心だ。
気もそぞろにかじりながら自然と耳に飛び込んでくる会話を聞いた。



「アッキー、今日もだめなの?」

「だめ、俺実家。昨日は?」

「昨日はあたしが無理だったの!」

「家訓。彼女を入れない」

「なにそれ、アッキー嘘つきー」

「俺ん家じゃなくても。別に」



なにか、もやもやとし想像を掻き立てる際どい会話から意識を逸らしたいのに、聞き耳を立ててしまう。そこにともちゃんの声が入り込んできた。



「大学生っぽいんだから男もいつまでも実家じゃなくて一人暮らしすればいいのに。なっさけない男ね」

「と、ともちゃん声おっきい……」



ホームには電車は来ていない。
カップルの会話があたしたちに聞こえるくらいだから、きっとともちゃんの声も届いているはず。


怖ず怖ずと顔を向ければ、――案の定。
2人はあたしたちを凝視していた。


ああ、もうやだ。
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