キマイラ
お節介で紳士な俺故、立ち止まるのは当然。
女の人の声だし止まらないでどうする。
俺はニコッと笑顔を作り、振り返った。
「何です……か?」
「あの、道に迷ってしまって……職員室ってどこですか?」
「……」
目の前には流暢な日本語で話す外国人がいた。
しかも美人。
早瀬のやつだってこの人見たら上の上って絶対言う。
落ち着け俺!
英語じゃなくてもいいんだぞ!?
相手日本語ペラペラみたいだし!
ちょっと焦っただけさ!
「職員室ですか?」
「はい」
「職員室はここを真っすぐに行ったところにありますよ」
「そうですか!ありがとうございます!!」
「あの」
「はい?」
「秋に来る英語の先生ですか?」
「?」
え、違うの!?
外国人だし、教える学校の下見にでも来たのかな?って思っていたが、女の人は不思議そうに首を傾げた。先生じゃないとしたら誰!?
俺の反応を見て、疑問が伝わったらしく女の人は思いついたように言った。
「ああ、私、三者面談で来てるのよ。君、佐々木先生って知ってる?」