キマイラ
かけるの忘れてたらしい。
彼女は慌ててかけた。
その仕草が(見た目)年齢相応で可愛いく感じた。
「……あのXの人なんですよね?」
「……」
「俺、あなたをテレビで見たことあるんですけど、若者に人気があるらしいんですよ?」
「……」
「ファンサイトあんの知ってます?あ、お宅らにとったら非公式らしいんですけど」
「……」
「テレビで見るより小さいし若くて驚きました!」
「……」
「あ、えーと、このこと言いませんよ!?言ったらヤバそうだし」
「……」
「それから……」
「命乞い?」
殺されると思ったら、なんか急に口が止まらなくなった。
必死だった。
だから自分で自覚してなかったけど、彼女に言われ図星だった。
俺は何も言えなくなる。
「……」
「安心して、君を殺すつもりはない。記憶も消さない」
その言葉で少し安心する。
命拾いした。
しかし、彼女は低く、冷たい声で続けた。
「だけど今日起きたこと、私のことを他言したら命がないと思いなさい」
「……はい」
鳥肌がたった。
7月なのに寒気を感じた。