キマイラ
それからキマイラさんにとってどうでもいいような質問を彼女は俺にいくつかして気づけば、家の前だった。
「あ、ここ」
「ん?ああ、ここが君の家?」
「うん。送ってくれてありがとう」
お礼を言って家に入ろうて彼女に背を向けた時、
「……君ってすぐ他人に心開くよね」
彼女が言った。
俺は意味がよくわからず、彼女の方を再び見る。
彼女は口元に笑みを浮かべた。
「いつの間にか敬語じゃなくなってる」
「あ……」
自分でも気付かないうちに自然とタメ口で話していた。
「あまり人に心開きすぎると痛い目見るよ」
「……それはちょっと違う」
俺の否定の言葉にキマイラさんは笑みを消し、無表情になる。
無表情の顔。
だからかな?
「確かにそういう時もあるかもしれない。でも、
自ら心を開かないと、相手も心開いてくれない。
だから俺は相手が心を開くまでとことんしつこく心開いてやるさ」
真っすぐ彼女を見て言ったのに、話しているのはキマイラさんなのに、頭の中では愛澤さんの顔が思い浮かんで、俺は自分に言い聞かせるように言った。