キマイラ



走ってると目の前に愛澤さんの姿が見えた。
早瀬に気をとられている女子と同じペースだが、彼女は頑張ってこのペースなのだろう。
俺はあと半周で終わるけど、たぶん彼女は1周半だ。



「愛澤さん頑張って!」



すれ違う瞬間声かけたが、彼女は無言……というか俺なんかに構ってる余裕もないみたいで目も合わせてくれない。
息上がってるし、声かけない方がよかったかな?

ちょっと邪魔したかもと罪悪感を感じながらも彼女を追い越した。
そして俺がラストスパートをかけようとした時だった。


バタッ。


人が倒れるような音がした。


俺が咄嗟に振り返ると、愛澤さんが倒れている。



「な……」



どうして……!



「愛澤さん!!!?」





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