キマイラ



『でもさっき、……早瀬くん、は私との約束を破って私を心配して、珍しく彼がバカしちゃったから、私は頑張って彼と関係がないように見せるため、突き放して……』

「……」

『だからあの場に二人だけだったら普通にありがとうって言えたの。
素直になれないとかじゃないの、私はああしないとダメだったの』

「……」

『……早瀬くん、も私がしたことを理解してる。
あの場では私がああしないとダメだったってこと分かってる。
寧ろいけなかったのは彼の方だった』

「……愛澤さん」

『…………』



俺が言葉を挟むと彼女は黙った。
俺の言葉を待つ。


彼女は素直になれないとか不器用とかいう理由で無口だったわけじゃない。
態(わざ)とそうしていたと言うのだ。

本当はみんなと仲良くしたいけど、その方法がわからないような大人しい子じゃなかった。

無口なのも、冷たいことを言うのも、無視するのも、自分と関わって欲しくないため。


俺が思っていたのと逆だったんだ。
本当に彼女は俺やクラスメートを拒絶していたんだ。





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