イチバンボシ
「へぇ。...これ、母さんっぽい。」

「でしょ。だから好きなのかな。」

「母さんの絵って、全部不思議だよな。
...まあ、そこが良いんだろうけど」





そう言って劫は立ち上がる。


ドアの近くに転がったエナメルの鞄を持ち上げて。


多分着替えに行ったんだろう。


あたしはそれからしばらく絵を見ていた。


気がつくと、刹那が下で呼んでいる。


あたしは返事をして、急いで絵を片づけた。


きちんと、元にあった場所へ。


傷つかないように、そっと。
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