春夏秋冬物語
第一章 妖精ってほんとにいたんだ

オレ・本田冬生は正直超やさぐれていた。
何度目になるか分からない、名前のことで同級生にからかわれたからだ。

「くっそー!」

誰も好き好んで冬なんて文字を名前に入れた訳じゃない。
親が勝手に入れたんだ。
それに運悪く、オレの誕生日はクリスマスイブ。
思いっきり冬ね、なんて夏姉ちゃんにもいわれた。

オレは夏が良かったのに。

むしゃくしゃして小石を蹴飛ばして歩いていたら、誰かとぶつかって、寒さと雪で凍った地面に盛大にひっくり返った。

「いってええええ!」

頭が地面にクリーンヒットした。
本気で頭が割れると思った。

「大丈夫!?」

不意に頭上から女の人の声が聞こえた。
痛みに顔をしかめながら上を向くと、

妖精がいた。

いや、頭がおかしくなってた訳じゃないんだって。
本気で妖精だと思ったんだって。
そんくらいその人は綺麗だったんだ。

妖精ってほんとにいたんだ。
< 2 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop