春夏秋冬物語

確か夏姉ちゃんは高三だ。
周りの人は、もう社会人だと思ってるらしいけど。

「夏姉ちゃん」
「何?」
「雪夜って人知り合いにいる?」
「幸代? いるけど」
「ほんと!? 漢字は?」
「幸せに代わりで幸代」
「違うよ、雪に夜で雪夜って人!」
「それは知らないわー」

くう、せっかくまた会えると思ったのに。
ムスッとしていると、夏姉ちゃんが訊いてきた。

「何でその人を知りたいの?」
「今日帰ってるときにぶつかっちゃって、ハンカチ借りたから返さなきゃと思って」
「で、名前訊いたと」
「うん」

オレが頷くと、夏姉ちゃんはため息をついた。

「な、何」
「連絡先とか訊くでしょ普通。名前分かったって何にもならないのに」

あ。
言われてみればその通り。

「だ、だってオレまだ―――」
「小四だから分かんなかったんだもん―――でしょ。関係ないわよ、考えるのに歳なんて」

うっ……。
先読みされた……。
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