月へ連れてって
ちょちょ、ちょっと待ってよ?
つまりは…
「あなたは、月の世(?)からの使者(?)で
月の世(?)から下界に来ている姫を
連れて帰らなきゃならない、ってことね?」
「えぇ、そうでございます。」
その男は、ふわりと笑った。
「…………あんた、本当に月から来たの?」
「えぇ、…わかりませんか?」
「わかるかあぁっ!!」
…こいつ、猛烈にあやしい!
あやしいあやしいあやしい!
ちんたらボケのフリして
私から金を巻き上げようとしてるに違いないわ!
「………!!」
さっきまで笑った男は
急に真面目な顔で
私の首に顔をうずめた。
「…ちょ!ちょっと!!
なっ…にすんの…よっっ!!」
男は、もとの笑みを顔に張りつけて言った。
「いえ。
久しぶりの"人間の匂い"を嗅いでいただけですよ。」
「人間の匂い?」
「えぇ、月界と下界に住む者の体に染み付いた匂いは異なりますから。
…僕の匂い、わかりませんか?」
「ににに、匂いなんてわからないわよ!
とにかく、変な行動は謹んでくれない!?」