スゴクスゴイコト〜花集




ああ、そうか
今日は街の花火大会か


この街は毎年夏だけでなく
真冬の花火大会と題して
寒い季節を乗り越えるよう

幸せが
希望が
打ち上げられる


季節に逆らうなんて
考えもしなかった


「わあ、おじいちゃん見て見て綺麗だよ」



孫たちは必死に花火をおじいさんに見せようとしている。



けど彼等の席は窓側の俺の席の隣だ、俺が出ていったらドアの前で並んでいる団体客に塞がれてしまう。



俺は再び席に座り、おじいさんたちの方へ顔を向け声をかけた。



「あの、よろしければ、こちらに来ますか?」



「え?」



おじいさんと孫は見ず知らずの俺に声をかけられ、目が点になる、まあ当たり前の反応だ。


「いいの?」


けど子供は素直だ、笑顔になって俺に尋ねてきた。


「ああ、いいよ。四人席だから余っちゃうし」



俺は立ち上がり、おじいさんが移動しやすいよう手を差し延べた。孫たちもおじいさんの身体を支え、花火が見える席へ移動した。



俺は自分が何してるか
訳がわからなかった



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