pain〜約束の梯子〜


彼が次に眼を開いたのは、二日後の事だった。
もう動く事さえ不可能な彼は、看護婦に懇願した。

「代筆をお願いしても宜しいでしょうか」

看護婦は快く承諾した。
そして、これが最期の手紙になるだろう、と悲愁の念に促われていた。

力無い彼の声を、看護婦は便箋に綴った。


    ◆◆◆◆◆


拝啓 幸子様


時の流れとは面白いもので、貴女への想いが、憧れから愛情へと変わったのも、時の仕業なのでしょうか。


次にこの世に生まれ落ちる事が有るのなら、その時は貴女と共に生きたい。


そんな事が
もし仮にでもあったなら
きっと僕を見つけて下さい。


       敬具



    ◆◆◆◆◆◆



それから数週間後、もう彼に読まれる事のない幸子からの手紙が病院に届いた。



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