pain〜約束の梯子〜
彼が次に眼を開いたのは、二日後の事だった。
もう動く事さえ不可能な彼は、看護婦に懇願した。
「代筆をお願いしても宜しいでしょうか」
看護婦は快く承諾した。
そして、これが最期の手紙になるだろう、と悲愁の念に促われていた。
力無い彼の声を、看護婦は便箋に綴った。
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拝啓 幸子様
時の流れとは面白いもので、貴女への想いが、憧れから愛情へと変わったのも、時の仕業なのでしょうか。
次にこの世に生まれ落ちる事が有るのなら、その時は貴女と共に生きたい。
そんな事が
もし仮にでもあったなら
きっと僕を見つけて下さい。
敬具
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それから数週間後、もう彼に読まれる事のない幸子からの手紙が病院に届いた。