ハルオレ☆ -後篇-
「だめだなぁ。どうするの?観奈にもしものことがあったりしたら?もし何かあれば…もちろん君や君の大切な人にも危害が加わるよ。」
藤岡先生はまたため息をついて、『いや…』と言葉を続け、
「君には何もおとがめなしで、君の大切な人にだけって可能性が高いな。そのほうが君にはダメージが大きいだろ?」
「……相変わらず最低野郎ですね。」
彼方はニコッと笑う。
だがその笑顔は藤岡先生の言葉を全て理解してのものだ。
「お褒めの言葉と預かろう。でも僕以上に姉さんが黙っていない。女だてらに澤原財閥の組織を束ねてないからね。その愛娘に何かあったら、君だけじゃなく僕もただでは済まないだろうね。」
「………。」
「ま、姉さんの恐ろしさは…まぁ君に言うまでもないか。」
藤岡先生は腰に手を当てて『はっはっは』と笑い出した。
「とにかく、今日みたいに観奈から目を離すな。常に一緒にいて彼女の周りに寄ってくる害虫を駆除しろ。それが君の役目だ。前みたいな生活に戻りたくないなら…わかってるね?」
「……。」
一方的に話してくる藤岡先生に彼方は何も言わず、ただ黙っているだけだ。
「まぁ、そういうことだから。頼んだよ。」
藤岡先生は最後に彼方の肩をポンッと叩き、長い廊下を歩き去っていった。
「……チッ。あのクソが…。」
藤岡先生が廊下から見えなくなると、彼方がお約束のボヤきを呟いた。