ハルオレ☆ -後篇-
「あっ、うん。そうね。私も見つけたら澤原さんに菅谷君が探してた事伝えておくわ。」
愛穂はそう言うと後付けするように『あ、あと…』と言葉を続け、
「早瀬先生が用があるから職員室に来るようにって。それを伝えたくて…。」
「早瀬先生が?…うん、分かった。ありがとう。」
どうやら愛穂が彼方を探していたのは彼方に伝言があったからだったようだ。
「それじゃあ、またね。」
「うん、また…。」
そして、2人は互いに言葉をかけると、それぞれの方角へと歩き出した。
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愛穂から背を向けて歩き出した彼方の顔からは先ほど愛穂に見せていた甘い表情は消え、驚くほど冷酷な瞳を浮かべていた。
(失敗したな。まさか他人に聞かれるなんて…。)
彼方は小さく舌打ちをして、両腕を組み、
(でも室長といえども所詮は女子。思わず周りにポロッと話すことだってあり得る。それに僕は室長の事をほとんど知らないし、『誰にも言わない』なんて言われて素直に信用できるわけがない。でも…)
ニヤリと微笑んだ。
(あの様子じゃ、彼女は僕に惚れているみたいだし。まぁ、この手のタイプは面倒だけど、保険として僕だけに従う人形にしてしまえば問題ないか。)
そして、グッと拳を握りつぶした。
(なんだって利用してやる。大切な人を守る為だったら…ね。)
決意する思いを改めるように。