肉きゅうを触らしてくれるなら
「今日はありがとう。泊まれなくてごめんね。」
コツコツとハイヒールの独特な音がしたと思ったら、女の人の声が聞こえた。
「いいよ。また来て、次は泊まりね。パスタすごく美味しかったよ。また作ってね。」
それから、彼の声。反射的に隙間から顔を出して彼の部屋の方を見ると、知らない女性と私の彼氏のはずの人がキスをしていた。私はその光景を理解することができず、映画のワンシーンみたいに彼等を客観的に見ていた。
唇が離れお別れの言葉を言い出した。私は急いで隙間に隠れ直した。ハイヒールの音と共に私の横をさっきの女性が通り過ぎていった。エレベーターが閉じたあと、扉も閉まる音がした。