肉きゅうを触らしてくれるなら
私はその場にスーパーの袋を落とした。それと共に、心の中にあった小さな小さな赤いハートの塊が壊れた気がした。
そのあと、どおやってここまで帰ってきたか覚えていない。気づくとハイヒールを手にもって裸足で歩いていた。膝はストッキングが破れて血が出ている。
ここは柿の木がある家の前だ。塀には朝と変わらない、蛍光灯に照らされた友猫がふてぶてしく座っていた。彼を見た瞬間声をあげて泣いてしまった。奇跡的に近所の人は出てこなかった。友猫は汚い顔をして泣いている私を見つめていた。