流星ラジオ
深夜になり、彼はそっと部屋へ戻ってきた。
鍵がかかっていなかったことを不用心だと思いつつも、少しだけ喜んでいる自分がいる。
羽美が、開けておいてくれたのかな。
ドアを開けて彼は呼吸を止めた。
机に突っ伏し、無防備な姿で眠っている羽美がいた。
「不用心だな…」
小さく呟きながら、彼は旅行用のカバンに次々と荷物を詰めていく。
服も歯ブラシも、自分の思い出が残らないように。
彼女が自分を忘れて生きていけるように。
けれど彼は写真立ての前で手を止める。
「…これ、ぐらいは」
いいよね。
彼女の耳まで届かないほど小さな声は、狭い室内に落ちて消えた。