月物語 ~黒き者たちの宴~
それもつかの間―――
「おわっ!」
手で頭を抱えながら屈んだ。
烏が突っ込んできたのだ。
振り返ると、烏はまた向かってきていた。
目が合ったことが、威嚇だと思ったのだろうか。
或いは、二度も襲撃されるほど、烏は自分のことが気にくわないのだろうか。
礼は考えを巡らせたが、やはり威嚇と勘違いされたに違いない。
ふと、小学生のころ、烏に糞をかけられたことを思い出した。
―襲いかかりたいのはこっちの方よ!
『ダッさー!
変人には運じゃなくて糞が降ってくるんだな。』
教室中の笑い声が、胸に突き刺さった。