月物語 ~黒き者たちの宴~

―2―




夜だというのに明るい。



ぽっかりと、夜空に穴を開けたような満月が出ていた。




「今日に限って満月とは…」




老人は溜め息混じりに呟いた。




「なに、私が気をつければよいだけのこと。
これ以上、民たちを苦しめるわけにはいくまい。」




青年は、苦い笑みを浮かべた。



自分の言葉に矛盾を感じたからだ。



月光とその表情が相まって、青年の妖艶な姿を映し出す。



青年の影は、明らかに人ではなかった。



飛ぶためであろうものが、月と張り合うように存在を強調している。



青年は、老人に下がるよう命じた。





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