月物語 ~黒き者たちの宴~
彩夏の温もりを感じた瞬間、苛立ちは涙に変わった。
「私っ…、あなたにっ…謝…れない…」
何のことで、こんなに乱れているのか彩夏にはわかった。
「きっとっ…、飛燕も…後悔してる…ぅうっ。」
王の器になったことではない。
礼の器になったことを。
彩夏はあやすように髪を撫でる。
「わたしの娘なのだから、それはないでしょう。
主上は優しい方。
飛燕は誰よりも近くで、あなたを見ています。
だから、主上が飛燕の身体を受けたことを後悔しないでください。」
彩夏が優しく笑った。
礼は嗚咽を堪えていたが、とうとう声を上げて泣いた。