月物語 ~黒き者たちの宴~
―3―
礼は眠っていた。
『外へ出て。あなたを待ってる。』
女の声が脳内に響く。
―また…
礼は、うっすらと目を開けた。
まどろみの中で、身体だけが起き上がる。
夢か現実か、曖昧な世界の中を歩いた。
扉を前にして気づく。
―あぁ、ここは自分の部屋だ。
扉をそっと開けてみる。
いつもいる衛兵たちの姿がない。
『さぁ。』
促されるまま部屋を出た。
何故、この声に従うのだろう。
そう考えたのは一瞬で、何も考えられなくなった。
『そのまま真っ直ぐ。
─────右へ。』