月物語 ~黒き者たちの宴~
声に誘導されながら、自然に身体が動く。
夜風に当たって、次第に意識がはっきりしてきた。
衛兵たちは何処にいるのだろう。
誰もいない。通ったことのない回廊だ。
だが、脚が休むことはない。
月は雲に隠れて、光を抑えている。
それが薄気味悪さを増幅させた。
『ここ。』
着いた先は、見知らぬ扉の前だった。
『入って。』
他人のもののように、腕が扉を押す。
ぎぃーっと不気味な音を立てながら、穴を開いた。
灯りはない。
暗闇で中がよく見えない。
『大丈夫。』
足を踏み入れた。
一歩ずつ中へ入っていく。