月物語 ~黒き者たちの宴~
「………という夢を見た。
だからどうという話だが、私の夢はよく当たる。
当たると言っても、獣に襲われると言うことではない。
こう、何というか…。」
「兆し、ですかな?」
それまで黙って話を聞いていた劉向が、口を開く。
「多分。」
「その獣についてもう少し詳しくお訊きしてよろしゅうございましょうか?」
礼は情景を思い返す。
「何しろ暗かったから。
血に染まった大きな身体に………
そう!
嘴!
嘴があったわ。
巨鳥よ!」
劉向と、後ろに控えていた彩夏の瞳が、揺らめいた。
「今にも食べられそうだったわ!」
二人の僅かな表情の変化など、礼には気づかない。