月物語 ~黒き者たちの宴~
劉向は初めて会った時と同じ様に、礼を安心させる笑顔を作った。
「よい方向に進んでおられます。
今日からその獣は現れないでしょう。」
礼は怪訝な顔になる。
「なぜ?
新月はもう少し先よ。
夢は月に関係しているのでしょう?」
「左様でございます。
赤く血に染まっていたのなら、もう終わったということでしょうから。」
「どういうこと?」
「主上は護られたのです。」
「護られた?」
「左様にございます。
とかく、ここ赤国でのそれは良い兆しです。
ご安心なさい。」
「そうなの?
うぅーん。
何だか納得できないんだけど、この世界は理屈だけじゃないからね。
わかったわ。
あなたがそう言うなら。」
劉向と彩夏は、陰を隠した笑みを浮かべたのだった。