月物語 ~黒き者たちの宴~
「そう。
君主ではなく、ね。」
『…雉院様は、もう長くないわ。』
話の矛先を変えられた。
「わかってる。」
『…雉雀様をお願い。』
「彼女には宋春がいるわ。」
『いいえ。あなたが必要。』
「何故?」
やや間が空く。
『次の新月に、事は起こる。
それまで、劉太常には気をつけて。』
「どういうこと?」
『明日から月が満ち始める。
私の声を…』
「飛燕?」
『聞い…て…』
既に飛燕が消えたことが、なんとなく礼にはわかった。