月物語 ~黒き者たちの宴~
開いた口が塞がらない。
『花』とは、人だ。
彼はつまり、夜伽の相手だという。
女が使う場合も夜伽というのか、それは聞くに聞けない疑問であった。
『花』は、御史大夫に属する秘官の一つである。
正式名称『華官(かかん)』。
彼らには、絶対の美貌と、彼らだけに許された名がある。
それが『花』だ。
花とつくものは、皆華官の者だ。
―まさか逆のパターンもあるとは。
女の夜伽はよくある話だが、女王の礼には彼が差し向けられたようだ。
『花』は、にこやかに茶の準備に取りかかる。
礼はその男をまじまじと観察する。