月物語 ~黒き者たちの宴~
「いや、いい。」
慌てて制す。
これ以上光燐には乗っかれない。
いくらなんでも、そういうことに泰然である必要はない。
男は、素早く断った礼の方を振り返る。
ショックを受けているようだ。
「私、何かお気に召さぬことをしでかしましたか?」
―いや、しでかすも何も…手にキスって…麗しの方って…
確かに甘い台詞であるが、甘すぎる気がする。
「もっもしや、主上は女性の方が!?」
彼は別の意味で青ざめ始めた。
なんだろう、この愉快な展開は。