月物語 ~黒き者たちの宴~



「宋春兄上にございます。
といっても、血は繋がっておりませんが。」



いつものへらへらした笑みとは違って見える。



敬愛という言葉が浮かんだ。



「陽春の春は、わらわがあてがった名じゃ。」



なるほど。



どうりで似た響きを持っていた。



それにしても、雉雀は枝のような身体をしている。



老いとは、逃れられないものだと嫌でもって示してくるようだ。



「ねぇ、どうして王を辞したの?」



宋春がぎょっとする。



「そなたもあの噂を聞いたか。」



< 204 / 334 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop